②:物語、テーマについての感想をば述べさせていただきます。(独自の解釈ですのでご容赦ください。。。!)

 



この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)
この世界の片隅に 上 (アクションコミックス) [コミック]
こうの 史代
双葉社
2008-01-12

この他、中巻、下巻の全三巻


Amazonの商品説明より

平成の名作・ロングセラー「夕凪の街 桜の国」の第2弾ともいうべき本作。戦中の広島県の軍都、呉を舞台にした家族ドラマ。主人公、すずは広島市から呉へ嫁ぎ、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑う。しかし、一日一日を確かに健気に生きていく…。
 





上、中、下、全三巻あるなかで、上、中巻までは戦時中のリアルな日常生活の描写、すずと夫の周作との間の微妙な愛情の流れ、といった感じのエピソード。。。

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↑或る出来事からすずは周作と白木リンとの過去を知る
 
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すず、周作、遊女の白木りん、すずの幼年期からの友人 水原哲、この四人が物語の核となるキャラ


周作へのすずの疑念、と合わせるように、その背景にただよう不穏な時代の空気、危機感をはらむ日常が淡々と静かに描かれます。



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↑"大ごと"の意味が変わってしまった今


しかし、中巻の終盤、サブタイトル『第26回 20年3月』 にて、呉が初めて米軍による空襲に襲われてから、ストーリー展開は大きく動き始めます。


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絵本の絵のような構図で描かれる空襲シーン、逆に見る者の心に焼き付く強烈さがあります。スゴイ!

 

ここから、戦争の日常の描写のリアルさは、戦争の暴力の日常のリアルさに変わり、読む者を圧倒します。
その暴力は、すずの大切なものを次々に奪って行くからです。

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それは「秘密」であり、家族であり、そして自分自身さえも――


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昭和二十年六月の呉工廠への空襲にすずたちは巻き込まれる




暴力の日常の中、すずにとっての世界は居場所を失い、歪んだものになってしまう。。。

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ここから背景の絵が"歪む"というか。。。かなり簡略されたような描き方に変わります。
 
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↑広島へ還ると言うすずと、これまでの生活の場の意味を問いただす周作とのシーン。すず、周作、りん、水原、この四角のグズグズがひとつの頂点を迎える場面。



居場所、広島、呉、すずにとっての答えを見出しそうになった時に、さらにそれを嘲笑うかのごとく人類が生み出した最大の暴力が姿を現す。

まるで、この世界の本当の姿表しているように! です。



それを、すずは『暴力に屈する事はない』と、呟く。

それは、「國」に居場所を求めようとしていた、と言う事でしょうか。
だから終戦を機に暴力、自分の歪み、そして、その歪みの正体を悟り、怒る。 

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その怒り、哀しみ苦しみを癒すように、 この後、すずが"失ったもの"が折に触れストーリーを先導して行くことになります。


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それは、作中の言葉を借りるなら、私たちに共通する、「あちこちに宿る」何かなのかもしれません。




様々な形をとって現われる世界のかたち、愛情のかたち、暴力のかたち。

それらが集まってゆく中で、その中で確かなものは。



確かなもの、それは『居場所』と言っても良いのでしょうが、これが、この作品のテーマなのであろうと私は思います。 





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「失ったもの」が語る最終話である『しあはせの手紙』、そしてラストに出てくる、「あちこちに宿る愛」を我が物にしつつ、映し出されるシーン。 

それは、呉を見守るまたたく夜空、呉の街を護る大自然、その街に暮らす人々。それはまさに「この世界」の縮図に見えます。




その中で、すずの失ったもの、そして得たものとは。。。
すずは居場所を、 
この世界の片隅に何を見出したのか。


考えていると色んな感情が湧きあがります。名作、傑作とはこう言う事なんだなぁ、と思い知らされます。



ぢーっと手を見つつ、考えます。。。




 




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……平成十八年から二一年の「漫画アクション」に、昭和十八年から二一年のちいさな物語の居場所があった事。のうのうと利き手で漫画を描ける平和。そして今、ここまで見届けてくれる貴方が居るという事。
 すべては奇跡であると思います。
 有難うございました。
 
下巻 あとがき より


。。。と、述べられています。




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②おわり