『乱 4K』デジタル修復版 上映行ってきた! 後編
映画の内容。俳優さん達の演技、演出、テーマなどについての感想をば。


戦国武将としての威厳にあふれた序盤の姿から、息子たちに裏切られてどんどん正気を失って行く表情の移り変わりはスゴイ迫力!

毎回数時間かけて作ったというメイクも凄い存在感で、秀虎の狂気を感じます。
無情、無常と言いますか、これもまた「乱」のテーマなんですね。。。
地獄へグイッ、グイッと引きずり込まれるような気分になりました。
そして、もう一つの地獄が戦争シーン。
コレもまた見る者を奈落の底へと引きずり込むようなリアリティだと思いました。
騎馬隊の合戦シーンはちょっとワクワクするようなカッコよさがあるのですが、それに対して三の城の城攻めシーンは。。
見た目の残酷さにもゾッとしますが、黒澤明の本物志向の迫力が炸裂していると言いますか、騎馬に蹴散らされる足軽兵のシーンはもうゾゾゾ〜!という感じ。
全速力の馬に突き飛ばされるだけでも凄いスタントだと思うのに、更にその上を何頭もの馬が走り抜けるとは。。
もし、俳優さんの頸椎辺りを踏みつけられたら。。なんて思うと背筋が寒くなります。
しかし倒れた後はピクリとも動かない。 この命懸けのプロ根性。
YouTubeで検索すると「乱」のメイキング映像がたくさん出てきますが、それを見ると四億円かかったという三の城セットの炎上シーンなど、撮影への本気度というか要求の過酷さというのが分かってもう。。。
イヤ~。。。やっぱり黒澤映画は凄い。イイ意味での無間地獄映画です。
構図などの映像演出についての感想。。
『乱』は演劇を見ているような画面作りをされているのが印象的でした。
そしてラストへ、無間地獄からすべての悲劇が離れ去るあの世へと。
幾度も雲のシーンが現れ、美しかった。。。!
幾度も雲のシーンが現れ、美しかった。。。!

ラストにて、秀虎が「此処があの世か」と言って見つめる雲。
全てが悲劇へと向かい、
無常を表すような雲の姿に秀虎はなにを見たのでしょうか。

やはり、『人類への遺言』と銘打たれた本作。
あらためて見て、その奥に流れる激流というか、黒澤監督の観客の願望には迎合しないかのようなその表現やストーリーに強いメッセージを感じました。
前編でも申しましたが、お住まいの地域で上映がある方は是非鑑賞をおススメします。
過去に見たことのある方には、齢を追うごとに変わる映画への評価を再認識する楽しみもあると思いますし、未見の方は、この先ひょっとしたら当分現れないかもしれない、スペクタクル性と作家性を併せ持つ大時代劇日本映画の魅力に浸れること請け合いでございます。
終わり
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