熊の獣害ばかり興味を持ち、三毛別羆事件 関連本 色々読む ①』記事より、本の感想部分だけ抜粋しました。




三毛別羆事件

三毛別羆事件(さんけべつひぐまじけん)とは、1915年(大正4年)12月9日から12月14日にかけて、北海道苫前郡苫前村三毛別(現:苫前町三渓)六線沢で発生した、クマの獣害(じゅうがい)としては記録的な被害を出した事件。
六線沢熊害事件(ろくせんさわゆうがいじけん)、苫前羆事件(とままえひぐまじけん)、苫前三毛別事件(とままえさんけべつじけん)とも呼ばれる。

エゾヒグマが数度にわたり民家を襲い、開拓民7名が死亡、3名が重傷を負った。
事件を受けて討伐隊が組織され、問題の熊が射殺されたことで事態は終息した。 


Wikipediaより





三毛別羆事件 2-5

『羆風(くまかぜ)』 
(文庫化はされていないらしく、全集を買って読みました) 


戸川幸夫動物文学全集〈6〉 講談社 

1977/4 戸川幸夫(著) ハードカバー



矢口高雄先生の漫画『野性伝説』の原作と知って読んでみました。 
木村盛武氏の事件の調査報告『獣害史上最大の惨劇苫前羆事件』の少し後に発表された、三毛別事件の事実を正確に追った作品。 


実は「戸川幸夫」という作家さんの事もよく知らず、動物文学というのも小学生の時読んだシートン動物記以来。 
しかし読んでみて、大自然という視点で描かれる物語に新鮮な感動を覚えました。 



主人公は「袈裟懸け」(三毛別を襲った羆の異名)自身。袈裟懸けの心情を語る形でストーリーは進んで行く。読んでいてスッと袈裟懸けの心情に入り込んで行けるのが面白い。  
それは自然の世界の捉え方のリアリティの凄さなのだろうと思いました。  


ストーリーで常に強調されているのが大自然のルール。 
大自然には大自然の法が存在する。 
羆も人間もその法に逆らって生きているつもりはなくとも、大自然は容赦なくルールを破った者を断罪する。 


それは悲劇でも無く、ヒューマニズムも何もなく、その法の世界に人も羆も翻弄されているに過ぎないとも言えるかも。


 
その法とは何なのか。。。 
それが本作品のテーマであり、それがラストに六線沢集落に吹き荒れる『羆風』というタイトルに込められているのではないかと思います。


ただ、この作品は短い短編なので終盤にかけての展開はちょっとだけ駆け足気味。
袈裟懸けの村への襲撃後はけっこうすぐに話が終わってしまい、漫画の『野性伝説』と比較すると若干の尻切れトンボ感を感じてしまうかも。 
  







三毛別羆事件 2-6

『羆嵐(くまあらし)』 (新潮文庫) 

1982/11/29 吉村昭  (著) 文庫



史実を元にした記録文学や歴史文学で有名な吉村昭氏による作品。

特に予備知識もナシ。三毛別事件をモデルにした本、という認識だけで読んだのですが。。。しかし、正直に言うとこの『羆嵐』が、事件を扱ったオリジナルの読み物としてはバランスが取れていて良い作品ではないかと思いました。 
              



『羆風』とは対照的にこちらは人間に焦点が当てられた内容。 
主人公と言えるのが、現実に羆を撃ち取った山本兵吉氏(作中では山岡銀四郎という名)。

強烈な個性を持ったキャラとして描かれ、この銀四郎と羆との対峙を中心に話は進行。
羆の討伐を依頼された銀四郎は、被害の甚大さに右往左往するだけの村民達をヨソに己の経験・信念をもとに羆に迫って行く。

フィクション作品なので、実際の事件からは少し脚色された内容になっているものの、しかしそこに写し出される事件の本質は脚色ではなく。。。 



人間の弱さとそれを乗り越えようとする強靭さ、そこから人間のありよう、この事件の凄まじさの根っこが描き出されているようにも思いました。



これが記録文学なのだなぁ。と、思うのであります。