さよ朝 1 ママ








見てきました、「さよならの朝に約束の花をかざろう」。


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『さよならの朝に約束の花をかざろう』

スタッフ

監督・脚本 岡田麿里
副監督 篠原俊哉
コア・ディレクター 平松禎史
キャラクター原案 吉田明彦
キャラクターデザイン・総作画監督 石井百合子
美術監督 東地和生
音楽 川井憲次
キャスト 石見舞菜香
     入野自由
     茅野愛衣
     梶裕貴
     沢城みゆき  他
     





大ヒット作「あの花」「ここさけ」の脚本で有名な岡田麿里氏が監督を務める、という点に注目して観に行ったのですが。。。

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『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』A-1 Pictures制作 テレビアニメーション作品。2011年4月から6月までフジテレビ・ノイタミナ枠などで放送。全11話。2013年8月31日には劇場版が公開。
『心が叫びたがってるんだ。』A-1 Pictures制作 アニメーション映画 2015年9月19日公開。
共に 監督 長井龍雪、 脚本 岡田麿里 、キャラクターデザイン 田中将賀。





ただ、正直言いましてこの映画、過剰な期待はしておりませんでした。



というのも、


有名な脚本家さんが映画監督として成功した例を私は殆ど聞いた事が無い。

さらに今作が初監督作品。


さらにさらに、あらすじを見てみれば。。。




縦糸は流れ行く月日。横糸は人のなりわい。
人里離れた土地に住み、ヒビオルと呼ばれる布に日々の出来事を織り込みながら静かに暮らすイオルフの民。
10代半ばで外見の成長が止まり数百年の寿命を持つ彼らは、“別れの一族”と呼ばれ、生ける伝説とされていた。

公式ホームページ「STORY」 より (http://sayoasa.jp/)





10代半ばで外見の成長が止まり、数百年の寿命を持つというイオルフの民、、、


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これは古来より幾多の日本アニメで用いられてきた伝統芸能と言ってもいいような、、、“ご都合主義” というとコトバは悪いですが、アニメオタク用の便利設定。


個人的にはこういう設定は大好きではありますが。



好きとはいえ、こういう設定が前面に出て、初監督作品。。。
これらがどうにもマイナス要因に見えて、上手くはいかないのではないかと不安を感じたのであります。




しかし、観てみると。。。

 




『あれ?』



私の眼前に現れたのは、実に美しい美術。

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東地和生氏の美術は美しかった!



嗚呼、美しいきらめく水面。
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水の表現も印象的。世界は美しい。




両親のいないイオルフの少女マキアは、仲間に囲まれた穏やかな日々を過ごしながらも、どこかで“ひとりぼっち”を感じていた。

(http://sayoasa.jp/)




それは激動を招き、、、

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そんな彼らの日々は、一瞬で崩れ去る。イオルフの長寿の血を求め、レナトと呼ばれる古の獣に跨りメザーテ軍が攻め込んできたのだ。

(http://sayoasa.jp/)




その中で貫かれるマキアの想い。


マキアはなんとか逃げ出したが、仲間も帰る場所も失ってしまう……。
虚ろな心で暗い森をさまようマキア。そこで呼び寄せられるように出会ったのは、親を亡くしたばかりの“ひとりぼっち”の赤ん坊だった。

(http://sayoasa.jp/)


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名付けられた名前が「エリアル」




戦乱や政治的な激動の中でも、
エリアルとの絆だけは確かな事。

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しかし、移り行く時の流れの中でいつしかそれも何もなかったかのように。。。



少年へと成長していくエリアル。時が経っても少女のままのマキア。同じ季節に、異なる時の流れ。変化する時代の中で、色合いを変えていく二人の絆――。
ひとりぼっちがひとりぼっちと出会い紡ぎ出される、かけがえのない時間の物語。

引用は全て公式ホームページ「STORY」より (http://sayoasa.jp/)





ひとりぼっちがひとりぼっちと出会い。。。
マキアの変わらぬ愛情が世界の美しさを表しているようなお話。
ワタクシ感動してしまいました。



気になった点としては。。。
ストーリーそのものは結構展開が速いので、各エピソードやキャラクターが伏線としてあんまりお話に絡んでこないように見えたり、設定は私にはいささか感情移入しづらかったり(しょうもない四コマに描いた通り、最近流行りの “母性萌え” という視点で見ることも出来るかもしれませんけどそれはともかく)したのですが、しかし、にも関わらず、マキアの気持ちに想いを致すと、激しく感情を揺さぶられたのであります。


このあたりは監督の岡田磨里氏の脚本の筆力とでも言えばいいのか、お話の力なのでしょうか、そういうものを感じました。






その力とは、、、

岡田氏本人による自伝も読みましたが、やはり幼少期から思春期に渡る故郷での体験が密接に関わっているのだろうなと感じました。





学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで
学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで [単行本]
岡田 麿里
文藝春秋
2017-04-12



内容紹介

「あの日みた花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」
ひきこもりだったじんたんと、幼少期のトラウマで声が出なくなった成瀬順。
二人を主人公にした二本のアニメは、日本中の心を揺さぶり、舞台となった秩父は全国からファンが訪れるアニメの聖地となった。
実は、そのアニメの脚本を書いた岡田麿里自身が小学校で学校に行けなくなっていたのです。
これは、母親と二人きりの長い長い時間をすごし、そして「お話」に出会い、やがて秩父から「外の世界」に出て行った岡田の初めての自伝。

Amazonの商品紹介より



人目や家庭などの周囲の環境すべてをネガティブに捉えてしまい、妄想の自意識の中で身動きが取れなくなってしまう故郷秩父での不登校時代。その後秩父を離れ上京、『外の世界』に出てからシナリオライターとして成功するまでの半生を描いた自伝。



無論、「あの花」にしても「ここさけ」にしても、私小説のように岡田氏自身の体験を暴露してそれを世に問おうとしているわけでは無く。。。
しかし、ここに書かれている『外の世界』というモチーフは、まさに故郷を追われ、外の世界へと出て行く事になったマキア達と通じる、「さよ朝」の世界観。

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その「外の世界」とは、インタビューの中で岡田氏自身が語っていらっしゃるのは、

『自分を檻(おり)に閉じ込めていたのは自分自身で、外に出てみたら現実は妄想ほど怖くなかった。』
17' 4月15日付  朝日新聞be 『(フロントランナー)アニメ脚本家・岡田麿里さん「あの花」「ここさけ」の先に』より)

と、つまり外の世界は、自由に泣き、自由に傷付き、自由に成長出来る世界。
見果てぬ悪夢だった外の世界は、抑圧を自由に突破し、喜びを感じる事が出来る場だったという事であろうと思います。



その意味で、「あの花」も「ここさけ」も、傷付きながらも自分の殻を打ち破り、世界と他者と自分の間合いを肯定的に捉えようとするひたむきさに溢れていたのではないでしょうか。

それは岡田磨里氏自身の体験に根差し、お話にリアリズムとパワーを与え、それが多くの人の心を捉えたのだろうなぁ。。。
と、思うのですが、それは『あの朝』も同様。


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『外の世界』へのリアリズムやパワーは、ファンタジーという設定にすることで娯楽作品としての幅が広がっているように思います。




岡田:『さよ朝』は結局、強い人間関係がいっぱいある物語、誰かと強くつながりたいと願う人たちの話にしたかったんですが、それを現代日本のお話でやると、ちょっと悪目立ちしてしまうので。ファンタジーという現実にはあり得ない設定のなかで、現実と地続きの気持ちを描けていけたらと考えました。

animate Times  (https://www.animatetimes.com/) 「映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』岡田麿里監督インタビュー――「なんとなく」の領域まで到達できる脚本、物語を作りたかった」 より



言い方を変えれば、世界は強い人間関係で成り立っていると言えるかも。
その世界を肯定的に描くために、ファンタジーとして決して交わることのないマキアとエリアルの関係の設定が起こされているという事も、非常に興味深いのではないか、、、と思いました。


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結局、『ママ萌え』、言い方変えれば『バブみ萌え』などと言ってる場合ではなく、


国乱れるとも破れるとも、自意識の為にどんなに人を傷つけ、傷つけられるとも、変わらず自分の人生と世界は美しい。。。と、感じられるようになりたいものです。

そういう想いに駆られる作品でありました。





BDI





終。