夜は短し歩けよ乙女』等の作品で有名な森見登美彦氏による作品、

ペンギン・ハイウェイ読みました。



ペンギン・ハイウェイ 1-1




結論から申し上げますと、読んで良かったです。




ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫) [文庫]
森見 登美彦
角川書店(角川グループパブリッシング)
2012-11-22




ポスター

映画版は18年8月17日より全国公開

監督  石田祐康
脚本  上田誠 (ヨーロッパ企画)
原作  森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』 (角川文庫刊)
出演者  北香那  蒼井優   釘宮理恵   潘めぐみ  西島秀俊   竹中直人 
音楽  阿部海太郎






あらすじ!








ぼくはたいへん頭が良く、しかも努力をおこたらずに勉強するのである。


(『ペンギン・ハイウェイ』より 以下同)






主人公は日本で一番ノートを書く小学四年生、研究大好きアオヤマ君。

ペンギン・ハイウェイ 1-2



アオヤマ君の住む街に現れる様々な異変。





ペンギンはどこから来たのか。それが問題だ。







謎のペンギン

”謎の生物” ジャバウォック


ペンギン・ハイウェイ 1-3






<海>は世界的な科学者も困ってしまうような大問題である。








森の奥に現れた謎の球体 <海>



ペンギン・ハイウェイ 1-4



そして近所に住む謎めいた歯科医院のお姉さん

ペンギン・ハイウェイ 1-5





「お姉さんの顔、うれしさ、遺伝子、カンペキ」

『ペンギン・ハイウェイ』アオヤマ君の研究メモより)





やがて異変は街全体、日本中大騒ぎとなる危機へと——

ペンギン・ハイウェイ 1-6
画像は全て映画『ペンギン・ハイウェイ』公式ホームページ&予告編より




お姉さんへの想いと共に、アオヤマ君が謎の解明に挑むひと夏の物語——


ペンギン・ハイウェイ 1-8







「少年、この謎が解けるか?」


(『ペンギン・ハイウェイ』)









アオヤマ君とお姉さんとの関係を軸に、街やお姉さんに起こる異変がやがては日本を巻き込む事態へと発展。

ペンギン・ハイウェイ 2-1





読んでみて思ったのは、森見作品の特徴である「京都」が舞台ではなかったり、文体も平易だったり。
小学生が主人公でジュブナイル小説的な雰囲気もあり、『四畳半神話体系』『夜は短し歩けよ乙女』等に代表される作家性というか、森見作品の特色はちょい抑え気味?に見えました。




そのため、印象としては、、、


ペンギン・ハイウェイ 2-2



核心的な謎はかなりの部分謎のまま終わります。
ストーリー的にもペンギンやジャバウォックが人間を襲ったりするようなゴーインな展開があればもっと盛り上がったかも、、、


アニメ版という事を思うと、映画がどういうストーリー展開になるのかわかりませんけれども、去年の『君の名は。』とか『ひるね姫』とか、今年の『未来のミライ』とか、収まる気配のないミライ系ブームの中に埋没しちゃうかも、などと無責任な事も考えたりしたのですが、





でも、、、

ペンギン・ハイウェイ 2-3





小学生が主人公という児童文学的要素もあり、さらに郊外のベッドタウンが舞台という事もあってか、目立つ個性的演出は表に出さず、序盤にお姉さんが『この謎を解いてみろ』と挑発的に言っている通りテーマ的な断定もせず、あえて読者の想像の余地を多く取っているように思います。




さらに、オモチャ箱のように様々な要素がちりばめられていて、読んでいて飽きない、ウィングはひろい。




作中は多くのキーワードが出てくるのですが、


ペンギン」、「ペンギン・ハイウェイ」、「ペンギン・エネルギー」、「ブラックホール」、「ワームホール」、「ジャバウォック」、「カンブリア紀の海」、「世界の果て」、「おっぱい」、「海辺のカフェ


それはすなわち「SF」であり、「宇宙物理学」であり、量子力学と存在論を合わせたような「哲学」であり、「」であり、「人生訓」であり、アオヤマ君の「信念」であるという、、、


だから、色んな要素に込められた解釈を考えるのも楽しい。




ペンギン・ハイウェイ 2-5

と、思われるかも知れませんがそうではなく。。。





それらの要素の核となるのは世界の果て、すなわち<海>







「私が研究しているのは<海>なの」

(『ペンギン・ハイウェイ』)



ペンギン・ハイウェイ 2-4


本作のもう一人のヒロインである、ハマモトさんが発見した<海>。
これには様々な暗喩が込められていて、謎が集約する一つのアイテムとして、大きな存在感で全体を引き締めていると思います。



そういった核に向かって、色んな暗喩が謎解明へのクライマックスに集まって行くわけですから、それはもう最後には手に汗握って大団円を迎える訳であります。




そして、お姉さんや<海>の真実を知ってアオヤマ君はどんな信念を持つに至るのか。
それは読む人に大きな感動を呼び起こさずにはいられない。



私はそうでありました。








この作品の良さの一つはオヤマ君の、おませながらも真っ直ぐに未来を見つめる純粋な子供ゴコロに感動する事。

読む人の生命の奥底にある童心的なロマン、のようなものを呼び覚ます、そんな作品ではないかと思います。






そしてもう一つはアオヤマ君の眼に映る、多彩な要素に溢れつつも問題は一つであるとする世界の姿でしょうか。


作品内には人間の生死や生命、その同一性や本質に言及するような描写も多々見られます。







なぜぼくはここにいるのだろう。なぜここにいるぼくだけが、ここにいるお姉さんだけを特別な人に思うのだろう。




「君は自分がなぜ生まれてきたのか知ってる?」




 お姉さんはその石をおっぱいであたためるようにして抱く。(中略)
 やがて銀色の大きなシロナガスクジラが現れる。
 そのシロナガスクジラが進化してぼくらになったんだな、というふうにぼくはなぜだか納得する。お姉さんがぼくらを作ったんだと考えるとうれしい。

(アオヤマ君の見た夢のメモ より)



「ぼくが研究してたのは、死ぬっていうのはどんなことかということなんだ」
ウチダ君が話し始めた。

(すべて『ペンギン・ハイウェイ』)





お姉さんは死ぬ事はありませんから、、、
だからこれは、<海>という永遠の生命の源をたどる旅のお話とも言える。




その先に立つお姉さんは一体何者か、それは神かも知れないし母かも知れない、そして恋人かも知れない。

その謎を思うと実に、、、深く深く感慨無量になるのであります。








お姉さんは言った。「この謎を解いてごらん。どうだ。君にはできるか」


(『ペンギン・ハイウェイ』)