富野語録―富野由悠季インタビュー集 (ラポートデラックス) [ムック]
富野 由悠季
ラポート
1999-01
アニメ雑誌「アニメック」編集長小牧雅伸氏による、1979年から1998年に渡る富野監督のインタビュー記事を発表順にまとめたもの。
何と言っても『ザンボット3』の時代からのインタビューが載っている。70年代のアニメファン界隈の雰囲気も知ることが出来る、資料的価値は高いと思いました。
マニフィック3・4合併号↑ 本書14pに掲載。雑誌編集と一般のアニメファンの女子高生二人を交えての富野監督インタビュー。
昭和54年1月6日収録
初体験インタビュー‼
富野喜幸・ザンボット3を語る
聞き手 愛読者代表 女子高生のお二人
ガンダムで一挙に大ブレイクする富野作品世界の伏線、もしくは「海のトリトン」から続く路線の区切りとも言える「ザンボット3」という作品へのこだわり、プライドといったものを感じる内容。その富野監督に一般のアニメファン女子高生が質問するという企画内容もユニーク。
そういえば私が小学生くらいの頃は、身の回りにいた真正のアニメオタクといえるような活動をしている子は女子だけだったような…
ただし、掲載されたものをそのまま載せるというコンセプトらしいので作品放映中に取材された、「この作品の今後のストーリー展開はどうなるのか」的な『イヤ、そんなのもうこっちは知ってますし…』と、若干言いたくなるようなインタビュー記事もあったりして。
アニメック8号
昭和54年10月9日収録
「機動戦士ガンダム」の最後はどうなるのか?総監督 富野喜幸
↑ 本書40pに掲載。「ミノフスキー粒子」って何?とか、シャアの額の傷は?とか、「ニュータイプ」とエスパーの違いは?等といった内容が並びます。そういえばガンダムブームの頃はこういった事はけっこう「謎」要素として話題になっていたのを思い出しました。
しかし、当時の空気を知ることが出来るという意味ではスゴク面白い。やはり資料として、昔の息吹を感じることが出来るという事に大きな意義があるように思います。
個人的には、「聖戦士ダンバイン」、「重戦機エルガイム」あたりからのインタビューが、ストレートに作品の内容・テーマに言及したものが多く、面白い。
イケイケだった「ガンダム」や「イデオン」の頃と違い、より内省といったものが深い気がします。
特に「エルガイム」のインタビュー。監督のアニメ業界への懸念からの教育論、作家論。ストーリー展開から説かれる女性観、人生観など、まあ実に多岐にわたり述べられており読み応えあり、です。
重戦機エルガイム大百科↑ 本書109pに掲載。ミアンやフル・フラット等を通じて富野監督の女性観、男性観が語られていて興味深いです。このあたりはガンダムシリーズに登場する、常に男をリードする女性キャラ達と通じるものがあるかも。しかし、ガンダムシリーズは戦争という環境の中で男に準じる立場の女性キャラが多いのに対してエルガイムはちょっと逆。ここもエルガイムの魅力なのかと再発見。
昭和60年4月4日収録
富野由悠季(総監督)インタビュー
〝ダバの将来があのラストシーンで決まったなどとは思わないで下さい。〟
すこし残念なのは、権利の関係で解説本などが出せなかった為『逆襲のシャア』に関するインタビューがない点。『ZZ』はあるのに…。
そして、富野作品を前期後期で分ければ後期作品の始まり、本人曰く『ほんとの意味での処女作』となる『ブレンパワード』のインタビューで終わります。
本書の為の特別編↑ 本書185pに掲載。この前に収録されている「vガンダム」のインタビューとは全く対照的にポジティブな雰囲気の内容。わたしは「ブレンパワード」はまだ未見なのですが、これは見ねば!という気になりました。
平成10年11月13日収録
ブレンパワードを終えて
富野由悠季・新たな挑戦!
こうして見てみるとやっぱり富野作品、富野節は面白い。
その作品世界の大本となる、レオナルド・ダ・ヴィンチ的と言ってもいいような富野監督の内面的な領域を歴史を追って感じることが出来る、富野ファンには必携の書と言えるのではないでしょうか。
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