『アリータ:バトルエンジェル』見て来ました。


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『アリータ: バトル・エンジェル』

監督
ロバート・ロドリゲス
脚本
ジェームズ・キャメロン
レータ・カログリディス
製作
ジェームズ・キャメロン
ジョン・ランドー
出演
ローサ・サラザール
クリストフ・ヴァルツ
ジェニファー・コネリー
マハーシャラ・アリ







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↓ H21.2.27 記事内でのミス・レモン女史
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…意外とアリータの眼の大きさに違和感はありませんでした。
予告編映像などで見ると眼の大きさがどうしても気になる点ではあったのですが。

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原作は木城ゆきと氏により90~95年迄週刊ビジネスジャンプに連載された『銃夢』。80年代・90年代初頭に隆盛を極めたサイバーパンクブームが産んだ傑作の一つ。


銃夢(1)

銃夢(1) 
木城ゆきと
講談社
2014-01-31



空中都市ザレムからの廃棄物で成り立つクズ鉄の街(映画版ではアイアンシティ)。

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クズ鉄の街でサイボーグ医師を営むイドは廃棄物の山の中から少女型サイボーグの頭部を見つける。

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(左) 映画版のイド (クリストフ・ヴァルツ)  (右) 原作でのイド

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イドは、その頭部にボディを修復して完全なサイボーグとして蘇らせる。



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イドはそのサイボーグをガリィ(アリータ)と名付け、共に生活を始める。
ガリィはクズ鉄街に廃棄される前の記憶を失っていたが、やがて記憶の底に眠る格闘術「機甲術」(パンツァークンスト)を操る戦士としての
己を知り、その宿命と戦うことになる…というお話。

突然、記憶もなくクズ鉄の街に産み落とされるガリィは人間の在り方そのものにも通じているような…そのガリィが如何に自分を捜し、業を乗り越えて行くのか、という事が『銃夢』のテーマなのだと思います。



映画版・OVA版・原作版のガリィ


そのガリィ、原作ではカワイイだけでは無い、結構ワイルドなキャラ。

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それに対し映画版のアリータはイドに反抗したり、10代の女性っぽいリアルさが全面に出ていたと思います。

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ここが原作と映画版の大きな違い…
(原作にまったくその要素が無い訳ではないんですが)




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(左) 原作の物語前半、ガリィの最大の宿敵 ザパン。結構原作にそっくり。
(右) ボディをバラバラにするまでガリィを追い詰めた マカク。(映画での名前はグリュシカ)こちらはアレンジ多め。


他にも大筋のストーリーやキャラクター設定で、原作では独身だったイドに奥さんが居る、マカクの名前がグリュシカになっている等、色々と原作からのアレンジがありました。
このあたりの細かいストーリー展開やアレンジは、93年に制作されたOVA版にかなりそっくりだという噂を聞き、私も見てみたのですが(YouTubeで…)、ホントにそっくり。

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↑ 血で自らの顔にペインティングするアリータ。
原作にはない、アニメ版にのみ出てくる演出。


原作漫画と比べるとOVA版のガリィはかなり繊細な美少女キャラ寄りに設定されているように見えます。
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↑『はいっ♡、イド!』と、言いつつイドにタオルを渡す。

儚ない中にも炎を心
に宿しているというか、大和撫子的なガリィになってます。
倒れそうになりながらも、運命の荒波に立ち向かって行く女性。NHKの朝ドラの主人公っぽいと言うか、サイバーパンクSFというよりは美少女アニメ…は言いすぎなんですが、それに雰囲気が近いと言えば近い。
『ガリィちゃん』があくまでジョークだった原作と違って、OVA版は「ガリィたん」と呼ぶのがちょっとだけしっくり来る。
そのガリィが戦闘になると強力な戦闘サイボーグとしての顔が現れる。そのギャップが肝になっていると思います。

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キャラデザ・作監は結城信輝さん(代表作は「天空のエスカフローネ」「地球へ…」など)。作画はすんごく良いです。



どうも映画版はこのOVA版に大きな影響を受けているというのは事実のようで…それはアリータのキャラクター設定にも現れているように思いました。

ギレルモ・デル・トロが絶賛してジェームズ・キャメロンへ紹介し、実写映画『アリータ: バトル・エンジェル』が生まれるきっかけとなったのは、このOVA版『銃夢』である。
Wikipediaより




印象に残ったのは、映画終盤でアリータがイドの事を"お父さん"と呼んだ点。



原作でのガリィはちょいワイルドで、イドとの距離が近いが故に素直になれない女性という感じ。イドをお父さんと呼ぶ雰囲気は無い。

しかし、ガリィの心の奥底には常にイドの存在があり…

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確かに、イドはガリィにとっての父親代わりの存在だと思うのですが原作中ではあまりわかりやすい形で明示はされない。
……明示されない、と言うかされてはいるんですが、映画版の父と娘、という所まで明瞭な設定では現れない。


父と娘の情愛という舞台の中で自分を探し、成長していくアリータの物語、という映画版の意図は明確になっているように感じました。

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キャメロン氏が本作の脚本を書き始めた当時、彼の娘は13歳だった。自身の娘と重ね、キャメロン氏は、「少女が自分の衝撃的な過去に気付き、運命に向き合っていく物語は、同時に父と娘のラブ・ストーリーでもあります」と明かしている。一方のサラザールは「キャメロンは私を見るたびに、自分のもう一人の娘のように見ていると思うんです。アリータはとても長い間、彼の娘としてキャメロンの心の中で存在していたから」と、キャメロンの視点を分析している。

(『銃夢』実写化『アリータ:バトル・エンジェル』の「父と娘のラブ・ストーリー」をジェームズ・キャメロン(製作・脚本)らが語る http://spice.eplus.jp/articles/229701)より。「サラザール」とは、アリータ役を演じた主演のローサ・サラザール。




愛のアリータ、業(カルマ)のガリィ



愛……


愛?



そう、愛。
『愛』の物語がサイバーパンクか?『銃夢』なのか?という疑問も無きにしも非ずだったのですが…しかし。
サイバーパンク(Cyberpunk):人体や意識を機械的ないし生物工学的に拡張し、それらのギミックが普遍化した世界・社会において個人や集団がより大規模な構造(ネットワーク)に接続ないし取り込まれた状況(または取り込まれてゆく過程)などの描写を主題のひとつの軸とした。
Wikipediaより



ナチスドイツの列車砲のようなアナクロな兵器が出て来たり、サイコメトラーが出て来たり、いきなりガリィがシンガーになって歌を歌ったり……このあたりの世界観は、言ってみれば原作者木城ゆきと氏のセンス・オブ・ワンダーそのもの。言葉を変えれば、この作品のテーマの一つである『業』。

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ちょっと捉えどころのないようにも見える、『業』に満ちた『
銃夢』の世界を映像化するには、ある程度キャッチーなキーワードで単純化せざるを得ないのかと。


そういう中で、この映画のサイバーでパンクな要素があるとすれば………




②につづく